AIで金型開発を高度化・簡略化し、
技能継承を加速します。
岐阜大学 地域連携スマート金型技術研究センター センター長
吉田 佳典教授
豊田合成株式会社 自動車事業統括本部
川地 正禎副本部長
インタビュー
INTERVIEW

AIで金型開発を高度化・簡略化し、
技能継承を加速します。
岐阜大学 地域連携スマート金型技術研究センター センター長
吉田 佳典教授
豊田合成株式会社 自動車事業統括本部
川地 正禎副本部長
生産年齢人口の減少に伴い、あらゆる産業分野において人材確保が重要な課題となっています。金型業界も例外ではなく、高度な技能・ノウハウの継承と生産性向上の両立が強く求められています。金型は製品を生み出す「マザーツール」として、製造業を根幹から支える極めて重要な基盤技術です。
岐阜大学地域連携スマート金型技術研究センター(センター長:吉田佳典教授)が中心となって推進する「スマート金型開発コンソーシアム」では、AI技術を活用し、金型開発工程の高度化・簡略化を図るとともに、熟練技能の形式知化による技術継承の加速を目指しています。これにより、「従来よりも少人数で持続可能な金型開発体制」の実現に挑戦しています。
スマート金型開発コンソーシアムでは、樹脂射出成形、鍛造・鋳造など、幅広い金型分野を対象として、次の4つの研究テーマを柱に研究開発を推進しています。

《吉田》
樹脂射出成形や鍛造といった金型を用いる製造プロセスにおいて、金型や成形機が自律的に制御・最適化を行いながら、良品を生産し続けることを目指す取り組みです。
例えば、金属を型で打ち抜くせん断加工では、金型とプレス機械が加工状態を判断し、切れ味の調整や工程最適化をリアルタイムで実施します。これまで熟練技術者の経験に依存していた判断領域をAIが担うことで、品質の安定化と省人化の両立を図ります。
工場へ導入した場合には、金型の位置関係や加工状態を自動的に把握し、人の介在を最小限に抑えながら製造を継続できる体制の構築が可能となります。
最終目標は、金型や加工機が製品を自動評価し、その結果を製造プロセスへフィードバックする「強連成サイバーフィジカルシステム(SCPS)」の実現です。
金型設計プロセスにおいて、AIとコンピューターシミュレーションを組み合わせる取り組みです。従来は、CADで設計を行い、CAEで解析を実施し、さらにその結果を読み解いて設計へ反映させる必要があり、その過程は設計者の経験やノウハウに依存していました。
本研究では、AIが設計案を作成し、シミュレーションを繰り返すことで設計精度を高めます。人間が行うと時間と労力を要する試行錯誤を、時短で実施することが可能となります。また、得られた試行結果はデジタルナレッジアーカイブ(DnA)として蓄積され、設計過程とその成果を分かりやすい形で継承できる仕組みの構築も可能です。私たちの目的は、全工程の完全自動化ではありません。AIが「繰り返し処理が可能なルーチンワーク」を担い、人間が創造的かつ高度な判断に専念できる環境を整備することを目指しています。
金型内部にセンサを組み込み、稼働状況をリアルタイムで可視化する技術です。
製品の製造状態が良好であっても、センサ出力値の絶対値が変動する場合があり、一方で一見正常値であっても突発的に不具合が発生するケースもあり、現場において大きな課題となっていました。そこで独自に異常の予兆を早期に検知する手法の開発を進めています。これにより、不具合発生の未然防止や安定稼働の実現を目指しています。本技術の一部はすでに実用化され、市場へ投入されています(技術成熟度TRL9)。
工場の状態を遠隔から把握し、制御やメンテナンスを可能にする技術です。XRゴーグルを装着することで、工場内の製品や金型の状態をリアルタイムで確認できます。
例えば、プレス機内部にカメラを設置し、通常は目視が困難な金型内部を映像として可視化する手法、現実映像に機械情報やセンサデータを重ね合わせて表示し、直感的に状態を把握できる手法の研究も進めています。将来的には、現場に担当者が常駐していなくても金型状態を正確に判断し、自動的に修理や調整が行われる「無人稼働スマートファクトリー」の実現を目指しています。

《川地様》
豊田合成株式会社ではこれまでも、CAEを活用した金型設計を進めてきましたが、その点において、岐阜大学との共同研究を開始して2年以上が経過しました。
従来は、CADで設計を行い、CAEで解析を実施し、さらにその結果を読み解いて設計へ反映させる必要がありました。その過程は、設計者の経験やノウハウに依存していました。
現在は、金型設計と解析が自律的に繰り返される中で得られた知見がナレッジとして蓄積され、「最適解を導くためのロジック」が明文化されつつあります。こうした技術の標準化は、若手技術者の育成期間の短縮など、人材育成の面でも大きな効果を発揮しています。
さらに、この技術をグローバルな課題解決へ展開することを検討しています。弊社グループのグローバル生産拠点で用いられる金型は、これまで現地調達化を推進してきましたが、近年は調達環境が大きく変化しさらに複雑化しており、どの国で金型を調達しても、同じロジックで設計された金型性能が求められています。上流から下流まで広範囲で一貫してCAEを活用し、設計品質を合わせこむことで、その金型を使用する生産現場で、良品条件幅を拡大させロバストな工程を実現させようと、高い期待を寄せています。
また、カーボンニュートラルの観点からは、弊社ならではの成形工程の省エネルギー化に向けて、センサによるエネルギー消費のモニタリングや、AIによる工程最適化の研究も進めています。さらに、製品設計やゲート設計などへのAI活用の拡大も見据え、取り組みを深化させています。

《吉田》
スマート金型開発コンソーシアムでは、「現場で使えること」を研究目標に掲げています。大学の研究は現場で活用しにくいと指摘されることもありますが、同センターでは、実用化までを見据えた研究開発を特徴としています。
豊田合成株式会社との共同研究では、互いの状況や課題を率直に共有することで、新たな研究手法や可能性が見えてきました。産学が同じ目線で課題に向き合うことの意義を強く実感しています。
また、社会人ドクターの受け入れや共同研究の推進を通じて、現場との密接な連携を重視しています。研究成果を社会実装へとつなげるためには、現場の知見と大学の知を融合させることが不可欠です。
学生に対しては、大量のデータを機械学習で処理・可視化し、ものづくりの面白さに気づいてもらう取り組みを行っています。さまざまなパラメータを設定し、試行錯誤を重ねながら結果を導き出す過程を体験することで、研究の醍醐味を実感してもらえるものと考えています。
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